物流業とは?事業領域や関連する法律について解説

昨今、物流の2024年問題や物流関連二法の改正などをはじめ、物流に関するニュースや話題が増えています。
では、そもそも物流業とは具体的にどのような役割や機能を担っているのでしょうか?
今回は、物流業の事業領域、運送業や倉庫業との関係、関連する法律について解説していきます。
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物流業とは?

日本標準産業分類では、「物流業」という業種はなく、「運輸業」と「郵便業」に分類されます。その中で以下の8項目に細かく分類されています。
●鉄道業
●道路旅客運送業
●道路貨物運送業
●水運業
●航空運輸業
●倉庫業
●運輸に附帯するサービス業
●郵便業(信書便事業を含む)
一般に物流業といわれる業種は、メーカーや生産者が作った製品・商品などを消費者のもとに届ける過程を担っています。
単純に荷物を指定された場所に届ける仕事と思われがちですが、実際には多様な業務があります。具体的には以下のとおりです。
機能 | 内 容 |
|---|---|
保管 | 貨物を一定の場所において、品質、数量の保持など適正な管理の下で、ある期間蔵置すること |
荷役 | 物流過程における物資の積卸し、運搬、積付け、ピッキング、仕分け、荷ぞろえなどの作業及びこれに付随する作業 |
流通加工 | 流通過程の倉庫、物流センター、店舗などで商品に加工すること |
包装 | 物品の輸送保管、取引使用などに当り、その価値状態を維持するために、適切な材料容器などに物品を収納すること |
輸送 | 貨物をトラック、船舶、鉄道車両、航空機、その他の輸送機関によって、ある地点から他の地点へ移動させること |
配送 | 貨物を物流拠点から荷受人へ送り届けること |
情報システム | 物流プロセスにおいて生じる情報を正確に把握し、効率的に一元管理すること |
物流業の事業領域

物流業は、実務的には大きく倉庫業と運送業に分かれます。また、付帯サービスとしてフォワーディングがあります。
倉庫 | 普通倉庫、冷蔵倉庫、野積倉庫、貯蔵槽倉庫、危険品倉庫、トランクルーム |
輸送 | 陸:トラック輸送、鉄道輸送 |
海:海上輸送、港湾運送 | |
空:航空輸送 | |
その他 | フォワーディング |
倉庫業
倉庫業は、寄託を受けた貨物を倉庫で保管する事業です。原料や製品、冷凍・冷蔵品や危険品など、多種多様な貨物を保管する役割を担っています。
倉庫内の作業は、検品から仕分け、流通加工など多岐にわたり、指定された日時に輸配送するための重要な業務です。
食品や日用品など一般的な製品だけではなく、慎重な取り扱いが求められる危険品や医薬品を扱うこともあります。そのため、倉庫の特性を把握し、貨物ごとに適切な取り扱い方法を理解しておくことが大切です。
トラック運送
トラックや自動車などを使い、陸路で貨物を運ぶ事業です。船舶や飛行機などで運ばれた貨物を消費者に届ける手段として、トラック運送が用いられます。
小口配送・時間指定での配送などのニーズに応えやすく、中・短距離の輸配送手段として用いられることが多いです。デメリットとして、最大積載量や一般道・高速道の重量制限の関係から大量の貨物を輸送できない点が挙げられます。
鉄道輸送
鉄道輸送は、貨物列車を使い、目的の駅まで貨物を運ぶ事業です。トラックと比べて、大量の貨物を長距離輸送することが可能です。また、環境負荷が低い輸送手段として注目が集まっています。
貨物駅は全国に約150か所と豊富で、渋滞がないため、定時運行で輸送できることもメリットです。ただし、最終的にはトラックを使って消費者のもとに貨物を届けることになります。
海上輸送
海上輸送は、船舶を使って海上から貨物を運ぶ事業です。日本は海に囲まれた島国であるため、国土交通省の「海事レポート2023」によれば、日本の貿易量の99.6%は海上輸送が占めています。
海上輸送は、食料品・日用品・石油・鉄鉱石などあらゆるモノの輸送に利用されており、重量物も低コストで大量に輸送できます。
ただし、デメリットとして運送に日数がかかりやすいことが挙げられます。
参考:国土交通省「海事レポート2023・数字で見る海事2023について」
航空輸送
航空輸送は飛行機を使って、空路で貨物を輸送する事業です。貨物専用の航空機に積載する場合と旅客機の客室の床下に貨物を積載する場合があります。
航空輸送のメリットは、海上輸送と比べると輸送時間が圧倒的に短いことです。また、事故や貨物の破損リスクが低いため、生鮮食料品、医薬品、精密機器、美術品などの輸送に適しています。ただし、海上輸送に比べ、輸送コストが非常に高く、貨物積載スペースにも限りがあるため、貨物の特性に合わせて他の輸送モードと使い分けられています。
フォワーディング
フォワーディングは、海上輸送や航空輸送などの手配や手続きを代行する事業です。輸出入の申告手続きや貿易書類の作成などの貿易に関わる多岐にわたる業務を行っています。
フォワーディングに関係する業務形態は以下の3つに分けられます。
フォワーダー | 他社の輸送手段を活用して預かった荷物を運ぶ形態 |
キャリア | 自社所有の輸送モードでフォワーダーから預かった荷物を輸送する形態 |
インテグレーター | フォワーダーとキャリアの両機能を持つ形態 |
港湾運送
港湾運送は、海上輸送に関わる港湾の荷役作業を担っており、船舶で運ばれてきたコンテナを中心に、貨物の積み卸しや仕分けなどの行う上屋への搬出入、一時保管を行います。
港湾運送事業法によって、以下7つの事業が定められています。日本国内で港湾運送事業を行うためには、港湾や事業の種類ごとに許可の取得が必要です。
一般港湾運送事業 | 船社又は荷主の委託を受けて、 船積貨物の受け渡しに併せて、船内荷役等の作業を一貫して行う事業 |
港湾荷役事業 | 船積貨物の船舶から(へ)の積み卸し(船内荷役)及び船積貨物の上屋、野積場への搬出入、荷捌き、保管(沿岸荷役)を行う事業 |
はしけ運送事業 | 港湾における貨物のはしけによる運送等を行う事業 |
いかだ運送事業 | 港湾におけるいかだに組んでする木材の運送及び木材の水面貯木場へ搬出入、荷捌き、 保管を行う事業 |
検数事業 | 船積貨物の個数の計算又は受け渡しの証明を行う事業 |
鑑定事業 | 船積貨物の積付に関する証明、調査及び鑑定を行う事業 |
検量事業 | 船積貨物の容積又は重量の計算又は証明を行う事業 |
出典:国土交通省「港湾用語の基礎知識 港湾運送事業」
物流業に関する法律

ここからは、物流業に関係する5つの法律の概要をご紹介します。
倉庫業法
倉庫業法は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉荷証券の円滑な流通を確保することを目的としています。倉庫は生産者と消費者をつなぐ役割を持つため、保管に関するルールを定めることで、消費者が安心して商品の購入・使用ができる状態が保たれています。
倉庫業法の対象となるのは、寄託を受けた物品を倉庫に保管することを目的にした倉庫を運営する事業者です。営業倉庫として国土交通省に登録が済んでいる、または営業倉庫を運営しようとしている事業者に適用されます。トランクルームなど倉庫業に近い事業者も倉庫業法の対象です。
国土交通大臣の登録を受けずに営業する倉庫は倉庫業法違反となり、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、または両方が科せられるので注意が必要です。
参考:国土交通省「倉庫業法」
自動車ターミナル法
自動車ターミナル法は、自動車ターミナル事業の適切な運営を確保すること等により、自動車運送事業者や、自動車ターミナルの公衆の利便性を高め、自動車運送の健全な発展に貢献することを目的としています。
この法律で定義される自動車ターミナルとは、旅客の乗降や貨物の積卸しのため、または自動車運送業の事業用自動車を2両以上同時に停留させることを目的にした施設です。貨物輸送の場合、荷主から集荷した貨物が運ばれてくるトラックターミナルが該当します。
トラックターミナルは、不特定多数の事業者が利用する一般トラックターミナルと、特定の運送会社が自社専用で利用する専用トラックターミナルに分かれます。多くの事業者が利用する一般トラックターミナルでは、安全性や物流機能の確保の観点から設置時に国土交通大臣の許可が必要です。
参考:国道交通省「トラックターミナルとは?」
物流効率化法
物流効率化法の正式名称は、「物資の流通の効率化に関する法律」です。2025年4月施行の改正にて、物流の持続的成長を図るため、荷主・物流事業者に対する規制的措置が新たに設けられ、すべての荷主・物流事業者に物流の効率化を実現するために取り組むべき努力義務が課せられる他、一定規模以上の特定事業者(荷主・貨物運送事業者・倉庫事業者等)に中長期計画の策定や定期報告の提出が義務付けられました。
貨物利用運送事業法
貨物利用運送事業法は、貨物利用運送事業を適切かつ合理的に運営するためのルールが定められた法律です。
貨物利用運送事業とは、荷主の需要に応じ、有償で利用運送(実運送事業者の行う運送を利用して貨物を運送すること)を行う事業のことです。自社貨物を実運送事業者に運送させるといった自らの需要の応じる行為や、無償での貨物利用運送は、貨物利用運送事業に該当しません。
また、貨物利用運送事業を営むためには国土交通大臣の登録が義務付けられています。
実運送事業者には下記事業者が該当します。
●船舶運送事業者
●航空運送事業者
●鉄道運送事業者
●貨物自動車運送事業者(一般貨物自動車運送事業者または特定貨物自動車運送事業者)
※貨物利用運送事業法第2条第2項~第5項に記載
なお、貨物軽自動車運送事業者は、貨物利用運送事業法における「実運送事業者」に含まれていないため、軽自動車や2輪車(バイク)などを使った利用運送は、貨物利用運送事業には該当しません。
参考:国土交通省「Q1.貨物利用運送事業とは、どのような事業か。実運送事業と何が異なるのか。」
貨物自動車運送事業法
貨物自動車運送事業法は、貨物自動車運送事業を適切かつ合理的に運営するためのルールを定めた法律です。
貨物自動車運送事業とは、荷主の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業です。前項でも述べた通り、一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業が該当します。
一般貨物と特定貨物においては、国土交通大臣からの許可を得ないと営業できません。
また、2024年問題に対応するため、貨物自動車運送事業法の一部が改正されました。たとえば、トラック事業者の取引に対する規制で、元請事業者に対して実運送事業者の名称などを記載した実運送体制管理簿の作成が義務付けられます。
軽トラック事業者に対する規制では、軽トラック事業者に対して法的知識を担保するための管理者の選任と講義受講、国土交通大臣への事故報告が義務付けられます。
参考:公益社団法人全日本トラック協会「貨物自動車運送事業法」
物流業界の市場規模と労働人口

矢野経済研究所の調査によると、2021年度の物流17業種総市場規模は23兆1,860億円と推計されました。また、2022年度以降は23兆~24兆円台になると予想されています。近年はEC市場が拡大しており、それに伴い市場は継続して拡大していく可能性が高いです。
また、国土交通省によると、2017年時点の物流業界の労働者数約254万人のうち、最も多いのはトラック運送事業ですが、トラックドライバーは2000年から2020年までに21.3万人減少しています。さらに、ドライバーの高齢化が進む背景から、2020年から2030年までには24.8万人も減ると予想されています。
参考:矢野経済研究所「物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)」
参考:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
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